「その死の神は、ターゲットに恋をしてしまい、彼女を助けるために、禁忌の筆で自分の名前に書きかえたそうです。それを使った代償は、生まれ変わった瞬間に命を落とし……そして、二度と生まれ変わることはできない……」
まさか、トーヤは。
「先輩は、禁忌の筆に手を出したんです。琉生さんの名前を……自分の名前に書き換えたんです」
ナオは、ううっ、と堪えきれなくなった嗚咽を漏らし、両手で顔を覆った。
俺は放心状態で、そんなナオを見つめていた。
「今日、先輩は人間に生まれ変わる権利を施行しました。そして、亡くなったら自分の心臓が莉緒さんに移植されるように働いたのです。そうすれば、ふたりとも助かるから……」
さっき見たトーヤは、"人間"だったのか?
だから、血が流れ、俺以外の人間にも見えて、心臓も……。
トーヤは自分の新しい人生をなげうって、俺たちを救ったのか……。
どうして、そんなことを。
「愛する幼なじみを遺すつらさがわかるからこその、先輩の選択でした……」
……トーヤ……っ。
「そして、二度と生まれ変わることが出来ないなら、もう俺の心臓は必要ない……だから莉緒さんに、と……」
……ふざけるな……。
「……っ、トーヤああああああああっ……!!!」



