家には自分から電話を入れておいた。
俺は大したことないし、クリスマスで忙しい中、母さんの手を煩わせるわけにいかない。
午後になり、莉緒の手術が始まった。俺は、莉緒の母親に連れられて手術室の近くで待機することになった。
何度か手術をしてきた莉緒だけど、心臓移植はまた特別だ。
最後の砦。
でも、命を落とす心配がない訳じゃない。
この手術がうまくいくかどうかもわからない。
おばさんに、家族の待合室に入るよう言われたが、俺は遠慮して談話ルームへ進んだ。
椅子に座り、手のひらに巻かれた包帯をじっと見つめる。
全然わからない。
なにひとつ理解出来ない。
莉緒に心臓を提供してくれたのは、一体誰なんだ。
トーヤは、どうなったんだ……。
「琉生さん」
そのとき、聞きなれた声が俺を呼んだ。
静かに頭を上げると、
「……ナオ……?」
いつからそこにいたのか。
窓辺にたたずみ、じっと俺を見ているのはナオだった。
俺は立ち上がり駆け寄った。
「なあ、どういうことなんだよ、トーヤは!? トーヤはどこだよ!!」
ナオの肩をつかんで揺さぶる。



