余命38日、きみに明日をあげる。


家には自分から電話を入れておいた。

俺は大したことないし、クリスマスで忙しい中、母さんの手を煩わせるわけにいかない。

午後になり、莉緒の手術が始まった。俺は、莉緒の母親に連れられて手術室の近くで待機することになった。

何度か手術をしてきた莉緒だけど、心臓移植はまた特別だ。

最後の砦。

でも、命を落とす心配がない訳じゃない。

この手術がうまくいくかどうかもわからない。

おばさんに、家族の待合室に入るよう言われたが、俺は遠慮して談話ルームへ進んだ。

椅子に座り、手のひらに巻かれた包帯をじっと見つめる。

全然わからない。 

なにひとつ理解出来ない。

莉緒に心臓を提供してくれたのは、一体誰なんだ。

トーヤは、どうなったんだ……。


「琉生さん」

そのとき、聞きなれた声が俺を呼んだ。

静かに頭を上げると、

「……ナオ……?」

いつからそこにいたのか。

窓辺にたたずみ、じっと俺を見ているのはナオだった。

俺は立ち上がり駆け寄った。

「なあ、どういうことなんだよ、トーヤは!? トーヤはどこだよ!!」

ナオの肩をつかんで揺さぶる。