余命38日、きみに明日をあげる。


俺は、走り出していた。

「脳死の患者の名前は? 今どこに居るんだ!?」

地に足がつかない状態のまま、我を忘れて、看護師に詰め寄った。

それは、必死の形相だったに違いない。

「落ち着いてください!」

困惑しながら俺をとりなす看護師。

「莉緒に心臓移植する患者の名前はっ……!」

「それは守秘義務があるのでお伝えすることは出来ません」

知っている。
ドナーとレシピエントは、お互いにその存在を知ることはできないということを。

「ここは病院です、お静かにお願いします」

看護師は強い口調で言うと、俺を置いて足早に去って行った。

なにがどうなってんだ……。

俺はその場にしゃがみ頭を抱えた。

俺だけが、ここに取り残されたようだった。