余命38日、きみに明日をあげる。


「あっ、琉生君!」

血相を変えて走ってきたのは、莉緒の母親だった。

「……おばさん、どうしたんですか?」

着の身着のまま家から飛び出して来たような格好とその剣幕は、おばさんらしくない。

「あのね、莉緒が緊急手術をすることになったの」

「えっ?」

「脳死の患者さんが緊急で運ばれてきて……莉緒にその方の心臓をっ……」

こみ上げるものが邪魔をしたのか、おばさんはその先が言えなくなる。

よっぽど興奮しているのか、息も切れ切れだ。

脳死の患者さん……?

今日、莉緒に心臓移植がされることは知っていた。

でも、それは俺の心臓だったはずだ。

どこかで運命が変わっている。

一体どうなっているんだ。

あたりを見回せば、忙しく動き回っている人たちが、なにも知らない俺をあざ笑っているように見えた。

俺の知らないところで、何かが大きく動いている……。

言い知れない恐怖が俺を襲う。