「……おい……おいっ……」
震える手で、恐る恐る倒れた肩に手をかければ、その目はうっすら開いた。
「琉生……」
かすれた声で俺の名前をよんだ。
細い切れ長の目からのぞくうつろな瞳が、俺をとらえた。間違いなくトーヤだ。
「……琉生は生きろ……生きるんだ……っ」
「な、なに言ってんだよ。どうなってんだよっ……」
微かに動いた指先をつかむように握れば、氷のように冷たいはずのトーヤの手が温かいことに驚いた。
「これで……いいんだ……」
「トー……なんなんだよっ……おい、しっかりしろよっ……!! トーヤ!」
わけもわからず、名前を呼ぶことしかできない。
やがて救急車が到着し、トーヤが担架で運ばれていく。
それを呆然と見送る俺。
そして、俺もケガをしていたため別の救急車に乗せられた。
「これで処置は終わりよ。もう大丈夫?」
「……ありがとうございました」
運ばれたのは、莉緒も入院する病院の救急センターだった。
念のために頭部のレントゲンを取ったり、手足に出来た傷の手当てをしてもらい、俺はフラフラと処置室を出る。
まだ頭は混乱していて、なにひとつ理解出来ない。
なぜ、トーヤがあんなことに……。



