余命38日、きみに明日をあげる。


「……おい……おいっ……」

震える手で、恐る恐る倒れた肩に手をかければ、その目はうっすら開いた。

「琉生……」

かすれた声で俺の名前をよんだ。

細い切れ長の目からのぞくうつろな瞳が、俺をとらえた。間違いなくトーヤだ。

「……琉生は生きろ……生きるんだ……っ」

「な、なに言ってんだよ。どうなってんだよっ……」

微かに動いた指先をつかむように握れば、氷のように冷たいはずのトーヤの手が温かいことに驚いた。

「これで……いいんだ……」

「トー……なんなんだよっ……おい、しっかりしろよっ……!! トーヤ!」

わけもわからず、名前を呼ぶことしかできない。

やがて救急車が到着し、トーヤが担架で運ばれていく。

それを呆然と見送る俺。

そして、俺もケガをしていたため別の救急車に乗せられた。


「これで処置は終わりよ。もう大丈夫?」

「……ありがとうございました」

運ばれたのは、莉緒も入院する病院の救急センターだった。

念のために頭部のレントゲンを取ったり、手足に出来た傷の手当てをしてもらい、俺はフラフラと処置室を出る。

まだ頭は混乱していて、なにひとつ理解出来ない。

なぜ、トーヤがあんなことに……。