余命38日、きみに明日をあげる。


慌てて這うようにして、人波をかき分け近づけば。

地面に横たわっているのは、黒いロングコートを着た男性だった。

どこか既視感のあるフォルムに、心臓がばくんと音を立てた。

まさか。

そんなことがあるわけない。

ざわつく胸を押さえるようにして、もっと近づいて。

顔を見て、絶句した。

…………トー……ヤ?

フードを脱いだトーヤの顔は、まだ記憶に新しい。

見間違えたりなんてしない。

これは、トーヤだ……。

体の周りを囲むようにあふれ出る血液。コンクリートに染みるそれは、真っ黒に染まっていく。

途端に、体がガクガク震えだした。

「息はしてるか?」

「下手に動かさない方がいいぞ」

周りの大人たちが、口々に何かを言っている。

他の人にもトーヤが見えているのか?

どういうことだ?