余命38日、きみに明日をあげる。


「歩ける?」

「む、無理そう……」

「大丈夫、俺が背負うから」
 
今よりもずっとひょろひょろの体で、歩けなくなった莉緒をおんぶした。
 
真っ暗な山の中。本当は怖くて泣きそうになったけれど、莉緒の前で泣くわけにいかない。

歯を食いしばって、莉緒をしっかり背負い、俺は山を下りたんだ。
 
そこには血相を変えた母さんたちがいた。

どうやら、俺たちは探されていたらしい。

こっそり家を出たつもりなのに、いないことにはすぐ気づかれていた。

「琉生! あんた何やってるの! 莉緒ちゃんは体が弱いんだから、連れまわしちゃダメでしょ!」 
 
俺は母さんにこっぴどく叱られた。
 
当時の俺には、莉緒の体がどのくらい弱くて、どの程度なら大丈夫なのか、その加減がわからなかった。

心臓病ということも、聞かされていなかった。