「歩ける?」
「む、無理そう……」
「大丈夫、俺が背負うから」
今よりもずっとひょろひょろの体で、歩けなくなった莉緒をおんぶした。
真っ暗な山の中。本当は怖くて泣きそうになったけれど、莉緒の前で泣くわけにいかない。
歯を食いしばって、莉緒をしっかり背負い、俺は山を下りたんだ。
そこには血相を変えた母さんたちがいた。
どうやら、俺たちは探されていたらしい。
こっそり家を出たつもりなのに、いないことにはすぐ気づかれていた。
「琉生! あんた何やってるの! 莉緒ちゃんは体が弱いんだから、連れまわしちゃダメでしょ!」
俺は母さんにこっぴどく叱られた。
当時の俺には、莉緒の体がどのくらい弱くて、どの程度なら大丈夫なのか、その加減がわからなかった。
心臓病ということも、聞かされていなかった。



