余命38日、きみに明日をあげる。


私は、琉生の決意をかみしめるように聞いていた。

誰に言われたわけでもなく、琉生が自分で決断してくれたことが嬉しかった。

口に出したことはないけれど、本音を言えば琉生にパティシエになるべきだと思っていたから。

「医者になるって言ったのに……ごめん」

「やだ、謝らないでよ」

それじゃあ、やっぱり私のために医者になりたかったと自分で認めたようなもの。

私が死ぬまでにやりたいことに掲げた3つの願い。

それが、この短期間でふたつも叶ってしまった。

ひとつは、琉生の作ったお菓子が食べたい──だった。

もうひとつは、琉生がパティシエへの道へ進んでくれますように。

すべて琉生頼みだっただけに、自分ではどうすることもできなかった。

それでも、琉生が自分の意志で私の願いをかなえてくれたことはもう奇跡なんじゃないかと思う。