余命38日、きみに明日をあげる。


こうやって、琉生とたわいもない話が出来るのはあとどれくらいあるのだろう。

無意識に、いつやってくるかわからない死の神におびえているのか、夢の中ではもう何度も会った。

黒づくめの洋服に、深くフードを被って顔が見えない死の神。

夢の中での私はイヤだイヤだと泣いて、目が覚めると本当に頬がぬれていた。そして、夢でよかったと安堵する。

やっぱり、私はアキちゃんのようにはなれない。

生きたくて生きたくてたまらないから。

「昨日さ……」

まだ頬に笑みを携えながら、急に真面目な口調になる琉生。

その口から出てきたのは、意外な人の名前だった。

「父さんと話したんだ」

「お父さんと……?」

お父さんの話なんて、いつぶりだろう……。

琉生は話してくれた。

将来は、パティシエになりたいと。

高校を卒業したら大学に行って視野を広げ、その後パティシエの勉強をする。

それを、はっきりお父さんに告げたんだ、と。