余命38日、きみに明日をあげる。

手には例のごとく、コーヒーのペットボトル。冷えた手を温める必須アイテムのようだ。

「じゃね、莉緒」

「うん、ありがとう。気をつけて帰ってね」

「気をつけて帰れよ」

私と琉生に見送られて、一花は病室を後にした。

さっきまで一花が座っていた椅子に、琉生が座る。

「琉生、鼻の頭赤いよ」

「え? まじ? ダッセ」

慌てて窓ガラスに映る顔をのぞきこむ琉生。

「もう12月も中旬だもんね」

みちるちゃんが言っていたように、もう8日後はクリスマス。

「手なんて氷みたいに冷たいし。ほーら」

琉生が手を近づけてきたから、きゃーっと言って顔をそむけた。

「ははは」

「手袋くらいしなって」

「男はそんなだせーことしないんだよ」

「いやいや、ダサいとかそんなこと言ってる場合じゃないでしょ。寒いものは寒いんだから」

おかしいの。

琉生はカッコつけなくても十分カッコいいのに。