一番に浮かんだのは……琉生の顔。
『絶対に死なせない。絶対に大丈夫だ』
今まで、琉生の言葉に何度救われただろう。
一緒に苦しんで、一緒に戦ってきてくれた。
だからこそ、琉生とは恋人同士にはなれない。告白できない。……琉生のために。
そう思って、今まで自分の気持ちを押し殺してきた。
これが最後の望みだとしたら……。一度くらい願ってみてもいいのかもしれない。
私が欲しいものは……。
誰にも知られることのない、密かな願い。
黒のマジックを手にする。おろしたてなのか、新しいインクのにおいが鼻をツンとさした。
キュッキュと音を立てながら、緑の画用紙の上にペンを走らせる。
「よめないよー。なんて書いたのー?」
みちるちゃんは、両手をテーブルにつけたまま、ぴょんぴょんと足をばたつかせる。
「うふふ、ないしょだよー」
私は、もみの木の一番高いところにつるした。
英語で書いたそれを子どもたちに読まれることはないだろう。
”I want to become your lover”
私はやっぱり、どうしようもなく、琉生が好きだ──



