余命38日、きみに明日をあげる。


一番に浮かんだのは……琉生の顔。

『絶対に死なせない。絶対に大丈夫だ』

今まで、琉生の言葉に何度救われただろう。

一緒に苦しんで、一緒に戦ってきてくれた。

だからこそ、琉生とは恋人同士にはなれない。告白できない。……琉生のために。

そう思って、今まで自分の気持ちを押し殺してきた。

これが最後の望みだとしたら……。一度くらい願ってみてもいいのかもしれない。

私が欲しいものは……。

誰にも知られることのない、密かな願い。

黒のマジックを手にする。おろしたてなのか、新しいインクのにおいが鼻をツンとさした。

キュッキュと音を立てながら、緑の画用紙の上にペンを走らせる。

「よめないよー。なんて書いたのー?」

みちるちゃんは、両手をテーブルにつけたまま、ぴょんぴょんと足をばたつかせる。

「うふふ、ないしょだよー」

私は、もみの木の一番高いところにつるした。

英語で書いたそれを子どもたちに読まれることはないだろう。

”I want to become your lover”

私はやっぱり、どうしようもなく、琉生が好きだ──