「ひとまず落ち着いているけど、今回は少し入院が長引くらしい」
「そっか……」
涙をこらえるように唇をきつくかむ水野。そして、震える唇で言葉をつないだ。
「聞いたの私……」
「え?」
「心臓移植をしないと……ハタチまで、生きられない……うっ……」
最後は声になっていなかった。そして、我慢できなかった涙をポロポロこぼす。
そうか。ついに莉緒は話したんだ。
「佐久間はずっと知ってたんだよね」
「ああ……」
莉緒はどんな決意をもって水野に話したのだろう。
命の灯が消えかかっていることを、察知したのだろうか。
「どうして莉緒がっ……あんなにいい子がっ……」
それを聞いた水野だって、苦しいはずだ。親友が、余命を告知されているだなんて。
だからなおさら俺は、この思いを水野と共有しなければならないと思った。
「俺さ、椎名とつき合おうと思う」
水野は、「は?」と低い声で言った。
声色には明らかに怒りが含まれていた。



