余命38日、きみに明日をあげる。


「ひとまず落ち着いているけど、今回は少し入院が長引くらしい」

「そっか……」

涙をこらえるように唇をきつくかむ水野。そして、震える唇で言葉をつないだ。

「聞いたの私……」

「え?」

「心臓移植をしないと……ハタチまで、生きられない……うっ……」

最後は声になっていなかった。そして、我慢できなかった涙をポロポロこぼす。

そうか。ついに莉緒は話したんだ。

「佐久間はずっと知ってたんだよね」

「ああ……」

莉緒はどんな決意をもって水野に話したのだろう。

命の灯が消えかかっていることを、察知したのだろうか。

「どうして莉緒がっ……あんなにいい子がっ……」

それを聞いた水野だって、苦しいはずだ。親友が、余命を告知されているだなんて。

だからなおさら俺は、この思いを水野と共有しなければならないと思った。

「俺さ、椎名とつき合おうと思う」

水野は、「は?」と低い声で言った。

声色には明らかに怒りが含まれていた。