そうだ。時間がないんだ。

変な意地を張っている場合じゃない。莉緒の願いを達成させて、運命を変えなければならない。

「じゃあな」

そう言うや否や、トーヤはコートの裾をひるがえし、フェンスを乗り越えた。

あっという間の出来事だった。

「待てよっ……」

慌ててフェンスの下を覗くが、もうそこに人影はなく、ただ風がそよいでいた。