どうして琉生が? 思いもよらぬ人の登場に、心臓が小さく跳ねる。
「驚かせてごめん。……大丈夫か?」
ドアノブを握ったまま、そっと声をかけてくる琉生。
「う、うん……」
私はゆっくり呼吸を整えた。
琉生が私の部屋に来るのは別に珍しいことじゃない。
だからお母さんもわざわざ琉生が来たことを知らせるでもなく、琉生は勝手に二階へ上がってくる。
でも、今日は──。
「ど、どうしたの……?」
あんな別れ方をした後だし、なんとなく気まずい。
琉生は問いかけには答えず、ドアを閉めると部屋の真ん中であぐらをかいた。
何か言ってほしくて琉生をじっと見つめる私に、なにを言うでもなく、見つめ返し
てくる。
なんだろう。琉生とこんな雰囲気になるのは初めてかもしれない。
その視線に耐えられなくて、私から視線をパッと外した。
「なんだよ、さっきの」
するとすぐに声が飛んできて、私の視線は簡単に引き戻された。



