目にうつったのは、一花の背中だった。
何も言えない私の代わりに、一花が声をあげていたのだ。
「え、なに?」
わいわいしていた星野さんたちが、冷めた目で見る。
「そういうこと言うのやめなよ。莉緒の気持ち考えたことあるの? 好きで体が弱いわけじゃないんだから、軽々しくそういうこと言うもんじゃないよ」
一花の声はよく通る。
そのせいで、教室内が静まり返った。
ピリピリしたムードがこの部屋を包む。
「いやだ一花、なにマジになってんの?」
言葉は軽いけど、敵意を含んだ声。
星野さんは、仲間を代表するように一花の正面に立った。
二人の間に見えない火花が散る。
あの星野さんに意見するなんて……と、ほかの子たちはハラハラした様子で見守っている。
「こんな寒い中走るの誰だってイヤじゃん」
「そうだよ。だったら走らなくていい倉木さんがうらやましくもなるじゃん。ねえ?」



