余命38日、きみに明日をあげる。


目にうつったのは、一花の背中だった。

何も言えない私の代わりに、一花が声をあげていたのだ。

「え、なに?」
 
わいわいしていた星野さんたちが、冷めた目で見る。

「そういうこと言うのやめなよ。莉緒の気持ち考えたことあるの? 好きで体が弱いわけじゃないんだから、軽々しくそういうこと言うもんじゃないよ」
 
一花の声はよく通る。

そのせいで、教室内が静まり返った。

ピリピリしたムードがこの部屋を包む。

「いやだ一花、なにマジになってんの?」
 
言葉は軽いけど、敵意を含んだ声。  

星野さんは、仲間を代表するように一花の正面に立った。

二人の間に見えない火花が散る。
 
あの星野さんに意見するなんて……と、ほかの子たちはハラハラした様子で見守っている。

「こんな寒い中走るの誰だってイヤじゃん」

「そうだよ。だったら走らなくていい倉木さんがうらやましくもなるじゃん。ねえ?」