「……ただいま」

「おかえり」



急いで歯を磨き終えて部屋に戻った。


せっかく雰囲気作ってくれてたのに、またぶち壊しちゃった。

こんなことなら昼寝しなきゃ良かったよ。



「あの……口に歯みがき粉ついてます」

「えっ⁉」



ティッシュを受け取り、鏡を取り出して確認する。

はぁ……何やってんだろ。今日は調子が狂ってる……。


口を拭いていると、透瑠くんが「ハハハッ!」と大声を上げて笑い出した。



「何がおかしいの!」

「今日の清花さん、隙だらけだなって……」



隙だらけ⁉
そんなこと生まれて初めて言われた……。



「……私だって苦手なことくらいあるよ」

「でも良かった。清花さん、完璧なイメージがあったので、同じ人間なんだなぁ~って安心しました」



笑いながら再び私の髪を耳にかけて、「包丁の使い方、また教えますね」と耳元で囁いた。


なんだろう……弱味を握られた気がする。

いたずらっ子みたいに笑う顔を軽く睨む。



「……今度は後ろからじゃなくて、普通に横で教えてね」

「は~い」



そう可愛く返事をした彼は、私の左頬にチュッと小さく音を立ててキスをした。