すべてを聞き終えても、これが現実かどうかわからなかった。


直哉は悪くない。


直哉は人殺しなんかじゃない。


その言葉がグルグルと頭の中をめぐっている。


お父さんもお母さんも、そして話終えた烈もなにも言わなかった。


「俺は……それでも……」


直哉が掠れた声でなにかを伝えようとする。


しかし、お父さんが左右に首を振ってそれを遮った。


「いいんだ。悪かった」


お父さんは直哉へ向けて頭を下げた。


その光景が信じられない。


「悪いのは全部俺だ。お前たちは人殺しなんかじゃない」


烈は小さな声でそう言うと、ドアへと歩く。


「どこに行くの?」


思わず声をかけた。


烈は苦笑いを浮かべて振り返る。


「言っただろ、俺はこれから全部清算しに行くんだ」


烈の言葉にあたしは息を飲んだ。


警察へいくつもりなのだとわかったからだ。