「こんばんは。……お邪魔しましたか」
手元の刺繍に目を落として扉を閉めかけたので、いえ、と慌ててとめる。
「もうすぐできますので、なかにどうぞ。少しお待たせしてしまいますけれど……」
「ありがとうございます。……あなたの手は魔法のようですね。あっという間にうつくしい模様ができあがる」
「もう何年もやっていますもの。ルークさまもお試しなさいますか」
「是非」
「では、そちらの針と糸をどうぞ。針をこう持って、糸をこう持ってくぐして……」
「針をこう持……て、ませんね。ちいさくて」
「ルークさまの手が大きすぎるのです」
「魔法を使えないなんて……」
「いえ魔法ではありませんけれど」
「アンジー、チェスはお得意ですか」
「どうでしょう。わたくし、遊んだことがありませんの」
「お教えしますのでお相手願えますか」
「ええ、是非」
「こちらを。あなたに似合うと思って」
「まあ、きれいな銀色の綿毛ですのね。ありがとう存じます。はじめて見ましたわ」
「月の花と呼ばれているそうですよ」
「あら、梯子をかけるのはおやめになったのですか」
「いいえ、梯子をかけてとってきたら、花になってしまったのです」
「そうですの。月には妖精が住んでいると言いますけれど、このなかにはいないようですわね」
「あら、お風邪を召されたのですか」
「いえ、今日はずっと大きな声で話さねばいけなかったものですから」
「お疲れさまです。紅茶を濃く淹れて蜂蜜を落としましょうか」
「ありがとうございます、お願いします」
「アンジー、カードはお得意ですか」
「今度はカードですの……? 少しは遊んだことがありますけれど」
「お相手願えますか」
「ええ、是非」
手元の刺繍に目を落として扉を閉めかけたので、いえ、と慌ててとめる。
「もうすぐできますので、なかにどうぞ。少しお待たせしてしまいますけれど……」
「ありがとうございます。……あなたの手は魔法のようですね。あっという間にうつくしい模様ができあがる」
「もう何年もやっていますもの。ルークさまもお試しなさいますか」
「是非」
「では、そちらの針と糸をどうぞ。針をこう持って、糸をこう持ってくぐして……」
「針をこう持……て、ませんね。ちいさくて」
「ルークさまの手が大きすぎるのです」
「魔法を使えないなんて……」
「いえ魔法ではありませんけれど」
「アンジー、チェスはお得意ですか」
「どうでしょう。わたくし、遊んだことがありませんの」
「お教えしますのでお相手願えますか」
「ええ、是非」
「こちらを。あなたに似合うと思って」
「まあ、きれいな銀色の綿毛ですのね。ありがとう存じます。はじめて見ましたわ」
「月の花と呼ばれているそうですよ」
「あら、梯子をかけるのはおやめになったのですか」
「いいえ、梯子をかけてとってきたら、花になってしまったのです」
「そうですの。月には妖精が住んでいると言いますけれど、このなかにはいないようですわね」
「あら、お風邪を召されたのですか」
「いえ、今日はずっと大きな声で話さねばいけなかったものですから」
「お疲れさまです。紅茶を濃く淹れて蜂蜜を落としましょうか」
「ありがとうございます、お願いします」
「アンジー、カードはお得意ですか」
「今度はカードですの……? 少しは遊んだことがありますけれど」
「お相手願えますか」
「ええ、是非」


