「エヴィ! エヴェリン!」

「あら、ルーカス。お友達はもういいの?」


 学園で出来た友達と思しき男と手を取り合う彼女に、その微笑みに、腹の底にどろりとした熱が生まれるのを感じた。その状況の発端は自分が知人たちに囲まれたせいだというのに。
 周囲に断りを入れつつ駆けつけた時にはその男とは別れていたが、また別の男に絡まれているではないか。

「婚約者が世話になった」
「放ったらかしにされているお嬢さんと話していただけだよ」

 へらりと笑うのは他でもなく私の友達のエンリック・エメリスで、過去に互いを紹介していて二人はすでに顔見知り。

「久々に会ったっていうのにご挨拶だな。僕が何かするはずもないって知っているだろう」
「それでも愉快な気分でないことも、知っているだろう?」
「まあね」

 エンリックに下心などあるはずがない。まだ公にしていないものの、奴には婚約間近の想い人がいる。エヴェリンが、友達の婚約者が他の男といるのを見て取って、保護でもしたつもりだったんだろう。分かっている。それでもひとりでに騒ぐ心臓、どれだけ余裕がないのか、自分の狭量さに閉口するしかない。

 黄色いドレスの華やかさにも引けを取らない佇まい、花飾りで髪を彩るその姿はこれまでよりも大人びて見えて、息苦しささえ覚えた。もっとずっと、子供のままでいてくれたら――。

 日に日に綺麗になる彼女と、日に日に情けなくなる自分。彼女の前では格好をつけたいのに、彼女の前だからこそ格好悪いことばかり。

 これが恋なのか、兄妹愛ゆえの所有欲なのかも分からないまま、嫉妬心ばかりが育っていく。