「エヴェリンはあなたたちの話をことのほか気に入っていてね」
「ちょっとルーカス、変なこと言わないでっ」

 ルーカスとわたし、エメリス様とアンヌ様、二組で向かい合ってテーブルにつく。
 慣れない顔ぶれでの食事会には、授業やお付き合いでいい加減慣れつつある。それでも妙に緊張感があるのは、普段ならもっと大人数での場だからか、それともひさしぶりに彼が隣にいるから……?

「こちらこそ、お二人のことをいつも噂していたんですよ」
「理想の婚約関係だってね。ルーカスがいつも婚約者の可愛さを語って聞かせてくるから」
「……リック。余計なことは言わなくていい」

 エメリス様を睨む彼の頬は赤く染まり、気まずそうにこちらを窺う目と目が合った。慌てて料理に視線を落としたわたしの耳に、微かな笑い声が聞こえてきた。
 アンヌ様が、そして給仕をしてくれ控えているランドール家の者たちが、あたたかい眼差しでこちらを見ていた。

「出会った時からそうだったな、惚気話ばかりして」
「お前にだけは言われたくはないけどな」

 彼はといえば、エメリス様と子供のように言い合って譲らない。外で見せる姿ではない、わたしやお兄様の前で見せる顔とも違う、こんなにも肩肘張らないただの男の子のようなルーカスを、初めて見た気がした。