*


 学生生活も六年あるうちの半分を終え四年目に入ると、三つ年上のルーカスは卒業を迎え、国内の最東端にある領地へと戻っていった。
 ともに学生だったこの三年は頻繁に顔を合わせていたから、簡単には会えなくなった現実に、しばらくは落ち着かない気分を味わった。

 ルーカスは伯爵である小父様を手伝って、いずれ来る日に備えいつでも引き継ぎが出来るように励むという。とは言っても小父様はお元気な方で当面引退するおつもりもないというし、彼はその傍らで剣術や魔導術の鍛錬を重ねご自身なりの道をも模索すると話していたから、ほんとうに勤勉な方だなと感心したものだ。

 落ち着かないなんて言ってはいられない。
 お兄様だってもう六学年、兄様たちがいなくても大丈夫だと安心してもらえるように頑張らなくちゃ。







「ひさしぶり、元気にしていた?」


 王都のタウンハウスでの再会は、穏やかなもの。
 もともと父と小父様の治める領地が南部と最東端と離れていることもあって、学外で顔を合わせるのはどちらかのタウンハウスであることが多かった。
 迎えに現れた数ヶ月ぶりの姿に、わたしは駆け寄りそうになって、けれどその衝動をぐっと堪える。淑女たるもの無闇に走ってはいけない。

「ルーカスこそ、元気そうで何よりだよ」
「お前に挨拶をしたつもりじゃなかったんだけどな、セルジオ」
「そんなこと言って。兄妹揃って元気で安心したろう?」

 ルーカスはにこやかに出迎えたお兄様に肩をすくめ、わたしに微笑みかける。