「あ、それは本当に殴りたくなるやつだから、湊くんが元気になってからでいいや」


あ、俺終わったかもしれない。


俺の視界が霞む。
叶奏からピントが外れて、そろそろ限界を感じている。


「ていうか湊くん、元カノいたとか聞いてない」
「……聞かれなかったから」
「今度絶対聞いてやる」
「じゃあ叶奏もな、今度」
「覚えてる間はいないから聞かなくていいよ」
「そか……ごめん、もう一回寝る。着いたら起こして」
「うん」


俺はそう言ってまた目を閉じた。


で、結局、病院について言われたのは様子見入院。
数日から1週間、と宣告されてうちの親はおおわらわ。
ちなみに、病床で寝る俺に、服を持って見舞いに来て早々あばら折ろうとしたのは姉貴。
伊織の寸止めでどうにかこうにか場は収まったものの、姉貴はせっかく1ヶ月ぶりの彼氏とのデートだったのに、と大激怒。


怖かったから、叶奏を盾にしていたら、叶奏の連絡先を交換することを条件に水に流してもらえることになった。


で、最後に、お前なんのために病院かよって薬のんでんだよ、って捨て台詞吐いて車で待つ彼氏の元へ帰っていった。