綺桜の舞う

◇ ◇ ◇



「鬼王が東町に拠点を移したらしい」
「東町……って」
「弱い族からそこそこ強いとこまで、勢揃いしてるところ。あそこで着火すれば、人数だけで言ったら2年半前の抗争よりも大規模になる」


あの日、叶奏はそう言った。


夜桜や綺龍の反撃に警戒した鬼王は、どうやら俺たちが絶対避けるであろう場所に、拠点を移したようだ。


「ということで。鬼王は現在、私たちは絶対来ないと踏んで、全く警戒してないご様子です。
新しい拠点、毎晩めっちゃ人少ないらしいのね」
「へぇ〜……その言い草だと、乗り込む、みたいな」
「正解」
「でも、大規模抗争は避けられないんじゃ……」
「うん。でも避けるよ。とっとと私たちから手を引かせて撤退。
あそこはもともと治安悪いところだから万が一火がついたら多分一瞬で潰し合いし出すだろうから、それが治ればあそこの族も減るだろうし、一石二鳥じゃない?」


規模がデカくなる可能性はあるけど、と呟いて、夕のパソコンを覗き込む叶奏。