◇ ◇ ◇


「蛍」
「ん、」


朔のお部屋、朔に手招きされて近づくと、膝の上に乗せられた。


「朔、今日のは、誰の匂い?」
「……多分雪兎」
「嘘だったら、怒るからね」


朔はいつも違う匂いをさせていて、たまに、女の子の匂いがする。
そういうことしてなくたって、浮気の時は浮気だし、悲しい時は悲しい。
……いつになったら、治るんだろう。


「蛍、こっち向いて」
「ん」


朔は蛍にチュッとキスをしてくれて、パタっとベッドに倒れる。


「蛍は、俺のどこが好き?」
「……最後は、ちゃんと戻ってきてくれるとこ」
「……それは不甲斐ないだけだから他で」
「え、と……蛍にたくさん好きくれるとこ」
「ん」


ギュッと抱きしめてくれる、朔。
蛍の頭に鼻を当てる。


「朔は、蛍のどこが好き?」
「……ほんとはあんまりスタイルよくないとこ」
「怒った」
「ごめんって。甘えんのうますぎて腹立つとこ」
「うん」


腹立つって言われた。
……むぅん。


蛍は朔を見上げる。


絶対おかしいなってわかってるんだよ。
良くないなって。おうち帰らなきゃだよな、って。
でもね、今の幸せを手放しちゃダメな気がするんだ。






何にでも始まりがあるように、いつか終わりが来ちゃうのを、蛍は知ってるから。