「ミア、今日はとってもいいお天気よ。少し散歩でもしましょうよ」

 セルフィルは毎日のように友人のもとへと訪れていた。もともと頻繁に顔を合わせる関係ではあったが、あんなことがあったのだ、放っておけるはずがなかった。
 ヴァリオルを追いかけて地上へと向かわないよう監視をとの言葉に自ら名乗りを上げもしたが、友人として寄り添おうと決めている、そんな命令など知ったことではない。

 自室の窓際に座り込むミアシェルは椅子の上、声は聞こえているだろうに、膝を抱えぼんやりと虚ろな目で遠くを見るばかり。

 恋人を失って、彼女は変わってしまった。誰が訪ねようと応じることはなく、家に閉じこもったまま一切の交流を断って。
 たくさんの友人に囲まれて、あんなに明るく無邪気に笑っていた彼女が。恋をして、実らせて、うっとりと惚気ける様には呆れもしたけれど、ついこの間まで幸せいっぱいに笑顔を振り撒いていたのに。

 気落ちなんて言葉では表せない。魂が抜け落ちてしまったかのよう。

 外から差し込む陽射しに浮かび上がる青白い顔。随分と痩せた。日に日に憔悴していくのが目に見えてわかって、セルフィルは自身の無力さに胸が締め付けられる。
 お菓子を焼いてみたの、お祭りがあるみたいよ、ハディールが失敗してベソかいてたの、イベントや友人の話題を捻り出し、何かしらの反応がないかと連日話しかけても効果はない。まるで壁に向かって話しかけているかのようだった。