レイチェルが意識を取り戻した時、部屋は煌々と明るく暑いほどで、自分が誰でどこにいるのか、頭が働かずに混乱した。
 しばらくずっと閉じられたままだった目が開いていることに気付いたメイドたちが慌てて走っていくのを、ぼんやりと眺めながら何が起きたか思い出そうとするけれど、重く痛む頭がなかなかそうはさせてくれない。



 雨が降っていたことは、覚えている。



 不意に痛む胸に手を当てる。ちらつく記憶の断片に鼓動が速まり、喉が詰まったように息苦しくなる。
 心惹かれていた、裏切りだと感じた、いっそ彼も自分も全部壊れてしまえばいいと……違う、そうじゃない、親しかった、出来るならいつまでもずっと一緒にいたかった、ただそれだけだった、三人でいる時間が大切だった。それなのに。

 ぎしぎしと軋むようにしか動かない身体を起こすのも億劫で、どうにも浅くしかならない呼吸を繰り返し、ベッドに寝転がったまま小さく丸くなる。勝手に涙のつたう頬を枕に押し当てて、止められない嗚咽を殺す。



 お嬢さまが目覚めたと、お嬢さまだけは助かったと、


 ――そう、聞こえた。