「きゃ――――――――――――……ッ!!」



 悲鳴が聞こえ、ギルウェルはぎくりと動きを止めた。
 今の声は。そう遠くなく響いたそれが知っているものに似ているような気がして、嫌な予感が胸に広がる。

 雨足が次第に強まっていく中、濡れて重くなる翼で宙を打って飛ぶ。

 今日は一日雨が降り続くと分かっていたから、彼女が水やりや洗濯をすることはなく、ベンチでくつろぐ姿も見ることは叶わないだろうと、いつものようには村へ行かなかった。
 だから彼女が今どうしているか、ギルウェルは知らない。悲鳴が彼女であるはずがないと、言い切ることが出来ない。

 昨日仲違いのように別れてしまった友人に会おうとしていたが、そんな場合ではなくなった。感覚を研ぎ澄ませて、不穏な空気を察して向かう。

 ああやはり知る気配に似ている、似すぎている。そんなはずがない。だけどやはり。……どうか違うと誰か言ってくれ。

 天使としては誰も怪我ひとつなくあってくれと願うべきところでありながら、胸中のざわつきに追い立てられるようにして冷静さに欠け、すでに立場として考えられる余裕などなかった。

 ギルウェルが祈りと予感の狭間で揺れながら木々を抜け、視界が開けた。そこは教会と泉のほぼ中間に位置する場所。何度となく、彼女に会うため、友人に会うため、通った場所だった。