周囲の目を盗んで外界へと繰り出すことが、いつの間にかエルザの趣味のようになっていた。
 帰りが遅くなって姉のビアットに叱られたり、地上を出歩いていることに気付かれそうになることも間々あったものの、それもまた刺激的で悪くはないと感じる。
 これまでがあまりに何事も起きない平坦な生活だったのだ。こんなにも楽しい日々を送れるなんて、エルザにとっては幸福でしかない。


「外って、光って、綺麗……」


 お気に入りの場所となった泉のほとり、大樹の根元に腰かけながら傾いていく陽光、色味の移り変わりをうっとりと眺めていた。
 地上の空は時間帯により色彩が変化する。空だけではない、まだ実際に見たわけではないけれど、木々の色まで時間の経過で変わるのだという。
 なんて不思議で素敵なんだろうか、光の中の世界は。

「悪魔もそう思うんだ?」
「っ!?」
「ごめん、ビックリさせた?」

 景色に気を取られて、接近する気配に気付かなかった。これで何度目かと、エルザは自身に嘆息する。


「また会ったね、エルザ」