彼女の手に見えた光の輪が溶けるように消える。それが背を焼く正体なのだと察し、いや、翼の片方を切り落としたのだと理解する。
 痛みで朦朧とする頭ではそれ以上のことが分からない。

「どう、した、の、セフィー……ッ」
「言ったでしょ、今のミア、大嫌いなの」
「セフィー……ッ」

 セルフィルが一歩、足を進める。感情の読めない顔。なくなる距離に奥歯が鳴る。
 しゃがんだ彼女に腕を取られ、ミアシェルの身体は力任せに引き上げられた。


「だから、」


 そのまま解放される腕。怯え竦んだ足がたたらを踏む。


「ばいばい」


 とん、と押された肩からバランスを崩した。体勢を立て直そうと出した足の先に踏み場はない。咄嗟に羽ばたこうとするもののどうにも背中が引き攣れるばかり、確かに片翼となっているのだとどこか冷静な部分が受け止めていた。

 景色がやけにゆっくりと流れて見えた。
 無意識に差し出した手を、彼女は握り返してはくれなかった。逆光で顔も見えない。胸元で握り締めている両手が、どこか祈りを捧げているかのよう――。


「セ、フィー」


 あまりに青い空に包まれて、風の音に耳を覆われる。
 落下していく最中、最後に彼女の声を聞いた気がした。