「セフィー……ごめんね、私、もう、生きていられない、かも…………」

 ヴァリオルが断罪され、ミアシェルは日に日に生気を失っていった。残された毎日に希望など見い出せず、何もかもが億劫で、目に映るものすべてが夜へと沈んでしまったかのよう。

 想いを交わす前は友人のうちの一人というだけだったし、遡るならそれ以前は顔を合わせたことすらなかった。それでも日々を生きていたし、彼と出会って以降よりもずっとずっと長い時間を不満もなく過ごしてきた、はずだというのに。

 魂を引きちぎられるほどの痛みも、胸に空いた大きな空洞も、前触れもなく流れ落ちる涙も、一向に無くなる気配はなく、震えと吐き気が止まらない。

「何言ってるの。あいつは生きているのよ? あなたが死んでどうするの」
「だけど私、私は……」

 セルフィルの毎日の訪問が、女神に命じられたことではないかとは察していた。地上に落としただけでは、会いに行こうと思えば行ける。それを防ぐためだろう。
 それでも、セルフィルが心から気遣ってくれていることも感じ取ってはいた。彼に出会うよりも前から、そばで笑いあっていた。言葉よりも何よりも、眼差しから心配する気持ちが伝わってくる。

 消えてしまいたい、なんて、優しい彼女に告げるべき台詞ではない。そうは思いながら、このまま衰弱して消えていけるならと、願ってしまうのだ。

「……じゃあ、もう、仕方ない、ね」
「セフィー……?」

 呟きが聞き取れず虚ろな目をゆっくりと瞬かせるミアシェルに、セルフィルは悲しげに微笑んだ。
「今日は快晴だから」と言って、いつになく強引に連れ出されたのは憩いの丘。何度かみんなでピクニックに来たことがある。もちろんそこにはヴァリオルとの思い出もあって、意図せず涙が込み上げる。

 ああ本当に晴れ渡った空だ。彼の瞳のように深い青が目に眩しい。晴れ渡った空は、世界はこんなにも色彩に溢れているのだと、ひさしぶりに思い出させた。