春の陽だまりのようだった。
 可愛らしく、あたたかで、愛おしい人。

 さらさらと風に流れる髪と、穢れたものなど何一つ知らないような澄んだ瞳、肌は雲のように白く、見たことがないほどに美しい。一目で惹かれ、彼女にとっての唯一になりたいと願った。
 見つめればはにかんで、手を繋げば嬉しそうに笑う、そんな何気ないひとつひとつの出来事が、あまりにも幸せで、幸せすぎて。この時間が永遠になればいいと、馬鹿みたいなことばかりを考えていた。


「なあ、辺境の村にある宝玉の話、聞いた事あるか?」

「ああ、その小さな小さな欠片でも、手に入れれば望みは永久に叶うとか」


 噂話を聞いた時、浮かんだのは彼女のことだった。

「ヴァル」と、にこやかに名前を呼ぶ小鳥のような声が脳内で反響する。――ミア。ミアシェル。愛しい人。特別な人。