悲しい顔で笑う姿を見た途端、自然と体が動いて、気づいたら彼女の背中に腕を回していた。



「無理して笑わないで。たとえ終わったことでも、今も涙が出るくらいずっと苦しかったんでしょ?」

「っ……」



肩を震わせて静かに泣き始めた彼女の背中を擦る。
すると、ふんわりと甘い香りが。

あっ、この匂い……確か前にも……。



「上川く……ちょっと……」



我に返り、急いで体を離す。

バカ、俺何やって……。



「ごめん! 嫌だったよね」

「ううん。その……涙で制服汚れちゃうから……」



急いで謝るも、気を遣わせてしまった。

いくら友達だからって、いきなり抱きしめられたら混乱するのに。特に異性の場合は。



「……ありがとう。もう大丈夫」



自責の念に駆られている俺に、綿原さんはふわっと柔らかく笑った。



「あ、私また目赤くなってない?」

「あー、少し。そうだ……」



スクールバッグからサングラスを取り出し、彼女に渡す。



「これつけて帰って。家族に見られずに済むし」

「ありがとう……!」



受け取ったサングラスをかけた綿原さん。
歯を見せて笑っている。

申し訳ない気持ちでいっぱいだったが、いつもの笑顔に戻ったので胸を撫で下ろした。