「楽しかったね~!」

「そうだね! 海の生き物も可愛いね!」

「でしょ~?」



夕方になり、魚と海の生き物の話をしながら駅へ向かう。

水族館デビューは、綿原さんのおかげで大成功。

新しい発見も多くて、少し知識が増えたかも。
今度は動物園に行けたらいいな。



駅に着くやいなや、急いでトイレに。

綿原さんには、お土産売り場の中で待っててもらうようお願いしている。

普通に待ってたら、また絡まれるかもしれないし……。



「綿原さん、お待た……せ?」

「っ、上川くん……」



トイレを済ませて戻ると──彼女の隣には、気の強そうな女子が数人。



「マジで上川と一緒だったの⁉」
「ってか久しぶり~! 覚えてる~?」



蚊の鳴くような声で呼んできた綿原さん。その顔は、あの時と同じ顔をしていた。



「久しぶり。悪いけど電車来るからもう行かなきゃ。じゃあな」

「えっ、ちょっと上川っ!」



キンキンした甲高い声を無視し、手を取って急ぎ足で改札口に向かった。



「……ありがとう」

「ううん。大丈夫だった?」



ホームのベンチに彼女を座らせる。

さっきの女子達は、中学時代の同級生。
そして……綿原さんを女子の中で孤立させた人達。


『彼氏を取られた』とか、『男子にいい顔してる』とか、ありもしない噂を流して追い詰めたんだ。


それを信じる他の女子達もどうかと思うけれど……幸せそうな彼女が羨ましかったんだろうな。

あの時……校舎裏で小さく丸まっていて、声をかけた時、うっすら涙を流していた。

もうあんな悲しい顔はさせたくない。