5分後。



「なるほど。王子様みたいな男の子ね」

「そうです! ヘアピン王子です!」



早口で並べた特徴をメモにまとめてもらい、結果、ヘアピン王子と名付けた。



「誰か思い当たる人はいませんか?」

「うーん……2、3年生で、かっこいい男の子か……」



改めて尋ねてみるも、先生は口をへの字にして頭を捻らせ始めた。

けっこう細かく出してみたけれど、やっぱり名前がないと難しそうだな。

学年もわからないから範囲も絞れないし。



「……やっぱり難しいですよね。すみません、無理言って」

「いや、こっちこそごめんね。色々話してくれたのに力になれなくて」



これはもう、全クラス回るしかないのかな……。

帰ろうとバッグを持って立ち上がった瞬間、後方でドアが開く音がした。



「失礼しまーす。お待たせしました〜」



振り返った先にいたのは──まさに、さっきまで私が熱弁していた男の子、通称ヘアピン王子だった。



「あ…………すみません、間違えましたー」



一瞬目を丸くした後、棒読みで謝罪した彼。

ドアが閉まり、室内が静寂に包まれる。



「ヤベッ、約束してたんだった」

「………つけた」

「ん?」

「見つけたーーっ‼」