まぁ、別に深い意味はなくて、ただ仲良くなろうとして言っただけだと思うけど。

ちょっと嬉しかったんだよね。



「は? 口説いてないし」

「なんでそう言い切れるの? 人違いって言ってなかった?」



悔しそうに溜め息をついた彼。

ちょっと意地悪な言い方しちゃったけど、私の勝ちみたい。


自分のことを覚えているか再度尋ねようとしたけれど、彼は本を閉じて突然席を立ってしまった。

本を棚に戻したかと思うと、席に戻らずドアのほうへ。


まさか逃げるつもり……⁉



「ちょっと待ってよ!」



渡り廊下を歩く彼の腕を掴む。



「ねぇ、なんでそんなに冷たいの? 昔は優しかったのに……」



涙が出そうになるのをこらえ、前に立つ彼の背中を見つめる。

4年もの間会ってなかったし、思春期だから多少は性格も変化するだろう。


だけど、こんな別人みたいに変わってるなんて。

私のこと覚えてたのに、どうして知らないふりをしたの……?



「……なんでそんなにうるさいの?」

「えっ……?」



再び溜め息が聞こえ、面倒くさそうに尋ねられた。



「俺が知ってる明莉ちゃんは、おとなしくて控えめな女の子なの。こんなうるさくて恥知らずな女の子は知らない」

「なっ……!」