夜の11時を過ぎたところで、観察を終えて家の中に戻った。



「北松さんとは最近どうなの?」

「……特に何も」



望遠鏡を片づけている兄にボソッと答えた。


明莉とはここ最近あまり顔を合わせておらず、連絡も取っていない。

実を言うと、お泊まり会の後から全然連絡が来なくなって少し心配していた。


新学期になってやっと話せたと思ったのだけど……。



「顔暗いなぁ。ケンカしたの?」

「いや……」



調子に乗って意地悪しすぎたせいで、とうとう機嫌を悪くさせてしまった。


やり過ぎたと反省して、謝ろうとおつりを渡した次の日に教室に行ったものの……。

光野さんに『明莉は応援団の用事でいないよ』と言われて、結局謝れなかった。


その日以来、「応援団の練習で忙しいだろうから」と勝手に理由を作り、顔を合わせないようにしている。



「最近は応援団の練習で忙しそうだからあまり会ってないだけ」

「へぇ、応援団やるんだ。詩恩はやるの?」

「なわけないでしょ」

「だよな」



「来年こそは行きたいな~」と言いながら、兄は自分の部屋に戻っていった。


体育祭が終わったら話せばいい。

でも、モヤモヤしたままだと、練習に集中できないよな。