「お願いします。詩恩のお母さんには言わないでください」

「何? 口止めされたの?」

「私が言ったってバレたら殺される」



「大げさな」と笑う母とミラー越しに目が合う。



「お兄さんは、詩恩くんが明莉と話してる姿を見て安心してたよ。表情がイキイキしてるって」



ええっ⁉ イキイキ⁉
私から見たら全然変わってないように見えるけど……。



「パパには、『千夏ちゃん達と友達の家に泊まりに行くみたい』って言っておくから、聞かれたらそう答えなさい」

「……ありがとう」



帰宅後。

昼食を食べていると、詩恩から電話がかかってきた。



「もしもーし」

「もしもし、今大丈夫?」

「うん! どした?」

「外泊の件だけど、当日天気が悪かったら観察できなくなるけど、それでも大丈夫? 予備日も考えたんだけど、兄さん忙しそうで休み取るの難しそうだから」



外泊に気を取られてすっかり天気のことを忘れていた。

そっか。
まだ2週間以上あるから予報出てないのか。



「いいよ!」

「ありがとう。また近くなったら連絡する。じゃ」



もし雨だったら宿題持っていけばいいか。

よし、晴れるようにてるてる坊主を作っておこう!