「あ、私ちょっとお母さんに電話してくるね!」

「いってらっしゃ~い」



パタン……。



「……なぁ詩恩、さっきの先輩の話、本当?」



ベッドの端に座り、神妙な面持ちで尋ねてきた健。


……やっぱり聞いてたんだ。

温めたわりには少し冷めてたからおかしいなと思ったんだよ。



「……どこから聞いてたの?」

「『先輩には忘れられない人がいるから』ってところから。盗み聞きしてたんだね」

「そっちこそ」



ハハハハッと笑い合う。



「直接聞いてみたら?」

「好きな人のことを?」

「それもだけど、北松ちゃんのことも」

「うーん……」



俺らが一方的に知ってるだけだから、好きな人がいるか聞いても怒られはしないと思う。

けど、亡くなった人──後悔が残っている人のことを思い出させるのは、先輩にとって酷なんじゃないか……?



「そんなに悩むこと? 相談してたの去年なら、解決してるかもしれないよ?」

「……それもそうだな」



あれから半年以上経ってるし、もしかしたらもう前を向いている可能性もあるかもな。