「まぁ……おまえは、男とわざと距離とってきたからな。そのせいで鈍感なところはあるし、フィーリング感じるとかは難しいかもな」

同情の眼差しを向けられ、少し腹立たしく思いながらも適当に流す。

「もういいよ。そういうことで。それに、桐島さんにだって失礼だよ。親切心で心配しただけで恋だのなんだの言われたら、世界中恋だらけで大変なことになるでしょ」

「だって言いたくもなるだろ。澪ももちろんだけど、桐島だってずっと女の影なくてさ、もう女に興味あるかもわからない状態なんだよ。そんなやつが澪のことはやけに心配してるんだもん。しかもその相手が俺の妹ってなったら……! もう、恋愛につなげたくもなるじゃん」

ひとり熱くなっている陸の言葉に、そういえば行内でも女性関係の噂がないなと思い出す。
だから〝実は男が……〟なんて噂が流れたわけだけど、それって今考えると相当だ。

けれど、実際話していても桐島さんが女性に苦手意識があるようにも思えない。
そりゃあ獲物を狙う肉食獣みたいな人はダメだろうけれど、桐島さん自身が好意を持った女性相手ならそういうわけでもないだろうし……どうして女性の影がないんだろう。

それとも陸にバレると面倒だから、内緒で付き合っているだけだろうか。

その可能性もあるな……と思いながら「女性の影がないって、ずっと?」と聞くと、陸がうなずく。