今日はたぶん、厄日だ。
大殺界とかそんな時期も重なっている可能性がある。

占いに興味がないから朝の星座占いコーナーの時に歯磨きに立っちゃったけど、きっと十二位だったに違いない。
カレンダーは見ていないけど、仏滅だった気がする。

ノストラダムスが予言していたかもしれないし、イルミナティカードにもこれを暗示するものがあったかもしれない。

「全然連絡とれないから諦めかけてたんだよ。澪だけじゃなくて陸まで俺のこと着拒なんだもん。恩を仇で返すっていうのはまさにこういうことだよなーって思ってたとこ。陸のこと、あれだけ面倒みてた友達なんて俺だけだったのにさぁ」

ひとりでペラペラと話すのは黒田だ。
会社から駅までを歩いている途中に声をかけられ、誰かと思えば……というわけだ。

約十年ぶりだっていうのに、よく人ごみの中から私を見つけられたものだと思う。私は声をかけられなければ、気付かずにすれ違っていた。

印象に残っていた狐みたいな目は健在で、それ以外も記憶と大きく変わらない。
黒田はたぶん、美形の部類に入るのだろう。あっさりとした端正な顔立ちも、がっしりとした男性らしい体つきも昔のままで、その表情には自信が浮かんでいた。