「綾瀬」


「……何?」



絢ちゃんに答えた後、真面目な声でわたしの名前を呼んだ藤ヶ谷くん。


声のトーンが変わって、ドキッとする。



「悩ませてるのは申し訳ないって思ってるけど、俺は本気だから。

……だから、時間がかかってもいいからちゃんと俺とのこと、考えて欲しい」



藤ヶ谷くんの気持ちは嘘じゃない。


真っ直ぐわたしの心まで伝わってくる。



「……うん」



でも、今はまだ返せない。


一言、そう返事をするのがやっとだった。



「よし、じゃあ俺、倉庫の鍵返してくるわ」



そう言って、藤ヶ谷くんは絢ちゃんたちの元へ鍵を貰いに行って、体育館を出ていってしまった。



「初花先輩っ、藤ヶ谷先輩と何話してたんですかー?」


「へっ? なんでもないよ! 今日の生徒総会のことについて話してたの」



テンション高めの絢ちゃんに声をかけられて、絢ちゃんにもバレているのかと思ってびっくりしてしまった。