「俺、綾瀬が好きだ」


「……えっ」



聞き間違いかと思った。


だって、今まで2年とちょっと一緒に居たのに、そんなこと一度も聞いたことがなかったから。



「アイツなんかより、俺を見て欲しい」



真っ直ぐとわたしを見る藤ヶ谷くんの目は本気だった。


街灯と家からの明かりがほのかに漏れているくらいの暗さでも、伝わってくる。



「あの……」



なんて返したらいいのかわからなくて、言葉に詰まってしまった。



「返事は……ゆっくり考えて」


「……うん」


「じゃ、また明日」



動揺して気がつかなかったけれど、もう家に着いていたらしい。


くるりと背を向けて帰る藤ヶ谷くんの背中を見つめたまま、しばらくそこから動くことができなかった。