お礼を言われると共に、勢いよく抱きつかれたわたしは、体のバランスを崩してしまった。


しっかりと新入生くんに抱きしめられていたおかげで、倒れずに済んだわけだけど……


すぐに不機嫌そうな藤ヶ谷くんに助けられた。



「副会長はケチですね。 ハグくらいさせてくれてもいいのに」


「……っ、お前な」


「藤ヶ谷先輩! とりあえず落ち着いて……!」



普段は大人しいはずなのに、取り乱してしまいそうな藤ヶ谷くんを絢ちゃんが止めてくれた。



「ふふっ」



そんなやり取りを目の前にしながらも、余裕そうな笑顔の新入生くん。


それが気に触るらしい藤ヶ谷くんは、さらに不機嫌オーラを漂わせていた。



「あっ、僕、1年A組の天馬(てんま) 央翔(おと)。 よろしくね、生徒会長っ!」


「う、うん……よ、よろしくね?」



どうやらこのイケメン新入生くんの名前は、天馬 央翔くんと言うらしい。


名前からもかっこよさが溢れ出ているなんてすごい。



「じゃあ、また明日も来ますね!」



そう言い残して、生徒会室を出ていった。


まるで嵐のように過ぎ去った出来事に、生徒会メンバーはただただ立ち尽くしていた。


これが、大波乱の生徒会の幕開け────。