夕食中も「話し込むのもほどほどにしなさい」だとか、「心配するでしょう」とか叱られ続けてオルガさんの事を詳しく聞けなかった。

 ついでに言うと、皓也がしばらくこの家に帰って来ないと聞かされたらしい松葉もうるさかった。

「皓也兄ちゃんと遊びたいー」
 なんてずっと言っているから、お母さんに「そうびと遊べばいいでしょ」とそっけなく言われていた。

 とんだとばっちりだと思ったけど、松葉に「姉ちゃんはゲームあんましやんないし、文句ばっかなんだもん」と拒否られてしまう。
 ムカついたけど事実なので、「はいはい、松葉は皓也にいちゃんが良いんだもんねー」と嫌味ったらしく言ったのに「とーぜん!」と返されてしまった。


 ……コノヤロウ。


 そんな感じで、やっとオルガさんの事を聞けたのは夕飯の後。
 お父さんが「オルガさんの容体はどうなんだ?」と聞いてくれてからだった。


「今は意識もあるし、命に別状はないらしいわ」
 お皿を洗い終わった手を拭きながらそう言ったお母さんの言葉にギョッとした。

 その言い方だとかなりのケガだったみたいに聞こえる。

「何かショックな話を聞いて、動揺しちゃったらしいのね。それで運転中に事故ってしまったみたい」

 ドクドクと心臓が嫌な感じに早鐘(はやがね)を打つ。

 そのショックなことって、もしかして皓也が狼になっちゃったこと?
 じゃあ、オルガさんのケガって作り話じゃなくて本当のことだったのかな?


「そうか……じゃあ後は、変に後遺症とか残らなければいいな」
 一先(ひとま)ず安心したという顔をしたお父さんがそう言うと、お母さんが「そうねぇ」と返していた。


 その後わたしは、お風呂に入って自分の部屋に引きこもった。

 悶々(もんもん)と答えの出ないことを延々と考えてしまう。

 皓也の事。
 淳先輩と安藤先生の事。
 それにオルガさんの事も加わって。

 考えて考えて、訳が分からなくなった頃には眠ってしまっていた。