「……淳、お前カッコ悪い」
「だって、狼に唸られるって怖ぇだろ!?」

 何だか二人は気の知れた仲って感じだ。
 まあ、二人は同じハンターだって言うんだから当然なのかも知れないけど。

「仲良いですね」
 ついポツリとこぼす。

「ああ、いとこだからね。僕達は」
「……似てないですね」
 ついつい本音もこぼれてしまった。

 顔の作りで言ったら淳先輩の方がカッコいいだろう。
 でも、中身を考えると断然安藤先生の方がカッコイイ。

 何て言うか、真逆な二人だ。
 兄弟ってわけじゃないんだから似てなくても当然なんだけど、血のつながりすら感じない。


「まあ、よく言われるよ。で、話を戻すんだけど……」
 さらりとかわして本題に入るところもスマートだ。

「こっちでも色々調べてみるけれど、すぐに戻せるって保証はない。その間皓也くんがこう言う状態だなんて皆に話すわけにはいかないからね。戻れる様になるまで、こっちで預からせてもらうよ」
「預かるって……」

「そうびちゃんの家にはオルガさんから上手く話してもらう様に伝えとくから、問題はねぇよ?」
「オルガさん?」

 って、皓也のお母さんの名前だよね?

「どうしてオルガさんが……?」
「そりゃあ、俺達に皓也の事頼んだ依頼人ってオルガさんだからな」
「ええ!?」

 安藤先生の後ろに隠れたままで自慢げに言う淳先輩の言葉に、つい大きな声を上げてしまう。


 え? え? どうして?

「何で依頼人がオルガさんなの? 自分の息子を監視させるなんて」
 非人道的に思えて、つい非難してしまう。

 でも、そんなわたしの感情をたしなめるように安藤先生は言った。
「もちろん、自分の息子を心配しているからだよ」
「え……」

「監視って言い方をしたから誤解させてるのかも知れないけれど、(よう)は警戒して見張ってたってこと。今みたいに何かがあったときに、サポート出来るようにね」
「あ……」

 確かに、サポートは必要だと思った。
 今の状況。
 今、もし淳先輩と安藤先生がいなかったら分からないことだらけで途方に暮れていたかもしれない。

 それを思うと、二人がいて分かる部分だけでも説明してくれたのは良かったと思う。


 でも、それならそれで何でオルガさんがハンターに依頼なんてするの?
 オルガさんは皓也がヴァンパイアだって知ってたってことだよね?

 あ、母親なんだから知ってて当然か。


「って、あれ? 何だか訳が分からなくなってきた」

 また混乱しているのかもしれない。


 頭を抱え出したわたしに、安藤先生は「ストップ」と声を掛けた。

「時間切れだ。色々聞きたい事はあるだろうけど、今日は帰りなさい。皓也くんは淳と一緒にいてくれ」
「え!?」

 安藤先生の言葉に驚いた声を上げたのは淳先輩だ。
 皓也はもう唸ってないのに、まだ怖がってるのかな。