話し声が聞こえる。
意識が覚醒してきて身じろぎをすると、なんだかモフモフなものが顔に当たった。
あ、気持ちいい。
なんだかいい匂いもするし……。
うちにこんなクッションあったかなぁ。
なんて思いながらクッションに抱きつくと、そのクッションが動いた気がした。
あれ? と思ったとき、声がかけられる。
「萩原さん、気がついたかな?」
あまり聞き慣れていない男の人の声がして、一気に覚醒した。
同時に飛び起きる。
何がどうなってるの?
そうして起きて見ると外にいる事が分かった。
それが分かると、さっきまでのことが思い出される。
そうだ、血を舐められて皓也が犬になっちゃって……。
「皓也は!?」
思わずそう叫ぶと、近くにいたらしい淳先輩が答えてくれた。
「今の今まで枕にしてたじゃねぇか」
「え?」
それを聞いてさっきのモフモフを見ると、皓也だと言う犬がいた。
伏せの状態で大人しくしている。
「……」
そうか、夢じゃなかったんだ。
どうやらわたしが意識を失ってからそれほど経ってはいないみたいだ。
空はまだ明るいし、数十分ってところかな?
「とりあえず萩原さんも起きたし、今後の事を話したいんだけど良いかな?」
そう言ったのは、いつのまにかいた安藤先生だった。
「どうして安藤先生が?」
「ああ、俺が呼んだんだ」
答えたのは淳先輩。
「好人も俺と同じで依頼があってこの学校に来たハンターだからさ」
「安藤先生も……?」
驚いたけど、確かにこの学校に来た時期は二人とも同じくらいだ。
同じハンターって言われればある意味納得出来る。
ん? でもハンターって事は……。
「!!」
ハッと気づくと同時にわたしは犬の皓也をギュッと抱きしめる。
「皓也をどうするんですか?」
まさか殺すとか言わないよね?
ヴァンパイアハンターって事は、ヴァンパイアを狩る人のことだったはず。
警戒を露わにするわたしに、安藤先生は落ち着かせる様に穏やかな声で答えた。
「どうするかと聞かれたら、守るつもりだと応えるかな?」
「守る?」
敵対してるんじゃ無いの?
声に出さなくてもわたしの疑問は通じた様だ。
安藤先生は優しく微笑んで説明してくれる。
「昔は良く小説なんかで書かれている様に敵対していたんだよ。でも時代と共に事情も変わっていってね、今じゃあハンターはヴァンパイア専門の警察みたいになってるんだ」
「警察……」
事情とやらは想像もつかないけど、安藤先生の言いたいことはなんとなく分かった。
警察は犯罪者を捕まえることもするけれど、弱者を守るために動く事もある。
皓也が犯罪者だったら捕まえるけど、そうでは無いから守るって事かな?
それでも完全には信用出来ない。
わたしにはそれが本当の事なのか判断出来ないから。
でも二人からは皓也を害そうって雰囲気が感じられない。
だから渋々皓也から離れて話を聞く事にした。