「皓也、痛いよ。離して」
痛みで涙を滲ませながら皓也を見上げる。
「……ごめん。……本当に、ごめん」
皓也は謝っているけど、手は離してくれない。
「でも、もう無理だ」
そう言って、皓也は流れ出たわたしの血を舐め取った。
「っ!?」
手を舐められる恥ずかしさ。
血を舐めて、飲み込んだ皓也への驚き。
でも、それ以上に妖しく美しい皓也から目が離せない。
天上の神々が飲むという甘露の様にわたしの血を飲む皓也。
唇についた血を舐め取る仕草がまさに妖艶という言葉が当てはまる。
その様子に、さっき淳先輩から聞いた言葉がストンと理解出来た。
ヴァンパイア。
皓也は、ヴァンパイアだったんだ……。
だからヴァンパイアハンターである淳先輩は、皓也を監視していたんだね。
これは、抵抗したり逃げたりした方が良いんだろうか?
皓也に見惚れつつも、そんなことを思う。
多分した方が良いんだろうとすぐに答えが出る。
でも抵抗しようとは思えなかった。
いつもと違う皓也は怖い。
普通に血を飲んでるところも、人間離れしていて得体が知れない。
それでも、怖いと思っても……嫌とはどうしてか思わなかったから……。
一通り舐め終えた皓也はふぅ、と軽く息を吐く。
その仕草も色っぽい。
視線が絡み合うと、左手を掴んでいた皓也の手がわたしの左頬を包む。
思っていたより硬い手にピクリと体が震えたけれど、視線は外さなかった。
皓也の綺麗な顔が近付いて来る。
わたしは何も考えていなかったけれど、何となく瞼を伏せた。
あ、キスされる。
そう思った直後――。
「そうびちゃん、大丈夫か!?」
わたしの安否を心配する淳先輩の声が聞こえた。
と、同時に皓也の手の感触がフッと消える。
その瞬間、わたしは覚醒したかのようにカッと目を開いた。
今、キスするところだった!?
淳先輩がもう数瞬遅かったらモロにキスしてるとこ見られた!?
恥ずかしさで言葉もなく悶えていたわたしは、皓也の変化にすぐには気付かなかった。
目の前にいたはずの皓也が一瞬でいなくなるなんて、普通だったらすぐに気付く事なのに。
気付いたのは、淳先輩が戸惑いがちに口にした言葉の後だった。
「……えっと、お前……皓也、だよな?」
その言葉に、わたしはやっと皓也の姿を探す。
目の前にはいない。
軽く見まわしてもいない。
おかしいな、と思って淳先輩を見ると彼はこっちを見ている。
……いや、視線がちょっと下の様な……?
そうして淳先輩の視線をたどるように目線を下げると、それはいた。
「………………………犬?」
そこにいたのは皓也じゃなくて、薄茶色の毛並みの大型犬だった。
痛みで涙を滲ませながら皓也を見上げる。
「……ごめん。……本当に、ごめん」
皓也は謝っているけど、手は離してくれない。
「でも、もう無理だ」
そう言って、皓也は流れ出たわたしの血を舐め取った。
「っ!?」
手を舐められる恥ずかしさ。
血を舐めて、飲み込んだ皓也への驚き。
でも、それ以上に妖しく美しい皓也から目が離せない。
天上の神々が飲むという甘露の様にわたしの血を飲む皓也。
唇についた血を舐め取る仕草がまさに妖艶という言葉が当てはまる。
その様子に、さっき淳先輩から聞いた言葉がストンと理解出来た。
ヴァンパイア。
皓也は、ヴァンパイアだったんだ……。
だからヴァンパイアハンターである淳先輩は、皓也を監視していたんだね。
これは、抵抗したり逃げたりした方が良いんだろうか?
皓也に見惚れつつも、そんなことを思う。
多分した方が良いんだろうとすぐに答えが出る。
でも抵抗しようとは思えなかった。
いつもと違う皓也は怖い。
普通に血を飲んでるところも、人間離れしていて得体が知れない。
それでも、怖いと思っても……嫌とはどうしてか思わなかったから……。
一通り舐め終えた皓也はふぅ、と軽く息を吐く。
その仕草も色っぽい。
視線が絡み合うと、左手を掴んでいた皓也の手がわたしの左頬を包む。
思っていたより硬い手にピクリと体が震えたけれど、視線は外さなかった。
皓也の綺麗な顔が近付いて来る。
わたしは何も考えていなかったけれど、何となく瞼を伏せた。
あ、キスされる。
そう思った直後――。
「そうびちゃん、大丈夫か!?」
わたしの安否を心配する淳先輩の声が聞こえた。
と、同時に皓也の手の感触がフッと消える。
その瞬間、わたしは覚醒したかのようにカッと目を開いた。
今、キスするところだった!?
淳先輩がもう数瞬遅かったらモロにキスしてるとこ見られた!?
恥ずかしさで言葉もなく悶えていたわたしは、皓也の変化にすぐには気付かなかった。
目の前にいたはずの皓也が一瞬でいなくなるなんて、普通だったらすぐに気付く事なのに。
気付いたのは、淳先輩が戸惑いがちに口にした言葉の後だった。
「……えっと、お前……皓也、だよな?」
その言葉に、わたしはやっと皓也の姿を探す。
目の前にはいない。
軽く見まわしてもいない。
おかしいな、と思って淳先輩を見ると彼はこっちを見ている。
……いや、視線がちょっと下の様な……?
そうして淳先輩の視線をたどるように目線を下げると、それはいた。
「………………………犬?」
そこにいたのは皓也じゃなくて、薄茶色の毛並みの大型犬だった。