どこへ連れて行かれるのかと思ったら、テニスコート横を通って今は使われていないプールの影に来た。

 ここは死角になっていて目立たない場所だ。
 ますます嫌な予感が止まらない。

 集団リンチとかは流石にないよね!?
 そもそも何でわたし呼ばれたの?
 淳先輩? 昨日すっごく絡んできてたし。
 いや、でも呼びに来たのは一年生だし……あっ!

 もしかして皓也の事?

 そう思いついたときには、一年女子の集団とご対面していた。


「連れて来たよ」
 そう言って三人は集団と合流する。

 よく見ると数人二年や三年もいた。
 でも一年が圧倒的に多い。

「ありがとう。ご苦労様」
 そう応えたリーダーっぽい一番前にいる女子も一年だった。


 年下だからって強気にはなれない。それ以前に数が多い。
 数に圧倒されて思わず(つば)を飲み込んだ。


 緊張の面持ちで何を聞かれるのか黙って待つと、リーダーっぽい子も少し緊張している様子で口を開いた。

「そうび先輩、昨日クール王子と手を(つな)いで帰ってましたよね? もしかして……」
 そこで一度言葉を詰まらせる。

 わたしはやっぱり皓也の事かぁと思いながら続きを待った。

「……もしかしてっ、つっ、付き合ってるんですか!?」
「……」


 ………………。
 あ、そうか。
 昨日の状態は手を繋いでたってことになるのか。
 と言うか、付き合ってるのかってなるのか。
 まあ、よく考えたらそうだよね。


 多分よく考えてなくてもそう聞かれることは予想出来たんだろう。
 でも皓也とわたしが付き合う……つまり恋人同士になるってのは、考えてもいなかったから聞かれるとは思わなかった。


 そのせいでフリーズしてしまう。
 でも黙ったままいたせいで肯定と取られてしまった。

「そう、なんですか……?」
 絶望感(ただよ)う表情で言われ、慌てて否定する。

「ちっ、違う違う! 付き合ってないよ! 皓也はわたしのいとこなの!」
「いと、こ?」

 わたしの言葉をちゃんと理解するためなのか、今度は彼女たちの方が(ほう)けたように固まった。


「いとこ……」
「って、親戚ってこと?」
 少しずつ安堵(あんど)した様な声が()れ聞こえてきて、わたしも安心する。


 彼女たちにわたしを(がい)そうとする気はないだろう。
 ただ、事実確認をしたいだけだ。

 それでも集団の力は怖いって聞く。
 はじめはそんなつもりはなくても、ほんの少しのキッカケで方向性が変わって悪い結果になる事もある。
 このままみんなが安心して解散となってくれれば問題はないよね。


 でも、誰かがポツリと呟いた。

「……確かいとこ同士って、結婚出来るんだよね……」

 そんなに大きな声じゃなかった。
 でも、何故かその場のみんなの耳に届いてしまったみたいだ。


 いとこで親戚って事は、恋愛対象外だよねって雰囲気だったのに……。
 今の一言で十分恋愛対象内だって感じになって来てる気がする。

 みんなの目に緊張感が戻っている様に見えた。