「──っ、お前、そろそろ帰る時間じゃねえ?」 絢斗くんは話を逸らすように立ち上がった。 前髪に隠されていて表情は見えなかったけど、頬が赤いの見えちゃったよ。 もしかしてちょっと照れたのかな、とか。ちょっと嬉しいって思ってくれたのかな、とか。 私ちょっとだけ期待しちゃいそうだよ。 「今何時?」 絢斗くんが時間を見るために手に取ったスマホを覗き込んだ、瞬間。 『紗英:今電話していい?』 ちょうどメッセージの通知が来て、見えてしまった。 「え……」