悪役令嬢には甘い言葉は通じない。



そんな私を他所に、ルーベルトは私の腰に腕を回して離してはくれない。



「それにさっきお菓子をくれなかったから、悪戯しちゃうからね」


「初対面の人間を好きになるなんて、おっ、おかしな話でしょう!」


「残念ながらーー俺は人間じゃないからさ」


「えっ……」



聞くよりも先に彼の口元から覗く尖った犬歯を見て、ようやく彼の翼が大道芸人が扱う物ではなく自前であることを理解する。


この人……前にお父様が話していた、吸血鬼、なの?


首元に近づいてくる顔を見て、ああ血を吸われてしまうんだと覚悟し目をきつく閉ざしたけれど、予想外の感覚に力が抜ける。


唇に何度も何度も触れる熱い温もりが、思考を乱す。



「っふあ……」


「ふふ、やっぱり君は俺のお姫様だ」



とろけた私を見て嬉しそうに笑うルーベルトに力の入れ方を忘れた身体を預けると、優しく抱き上げられ再び寝台の上へと移動する。


つまり、私は今夜……この人に食べられてしまうのだろうか。


痛みを覚悟する私に優しい笑顔を浮かべるルーベルトは、何度も何度も私の頬を撫でる。